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建築探訪
津山農協会館
所在地:
岡山県津山市
横山108

建築年:
1966年1月

設計:
川島甲士

写真1:北側外観


※1
写真2:南側立面見上げ

津山という街は、建築鑑賞を目的に訪ねる場所としてとても魅力的だ。 城跡があり、近代建築が散在し、伝統的建造物群保存地域もある。 そして何にもまして、モダニズム建築の至宝、津山文化センターが城跡の北側に鎮座する。
それら全てを巡るべく、滞在時間に余裕をもたせて同市を訪ねてはみたのだが、予定通りには事は運ばず。 その殆どを津山文化センターの実見に費やすこととなってしまった。 怒涛の造形が恐ろしい程の密度と完成度をもって構築された内外観に戦慄を覚えつつ、時間を忘れてその極上の建築を堪能。 結果、帰路の時刻ギリギリとなってしまい、他の鑑賞予定対象はまたの機会にということで慌てて駅まで引き返すこととなる。

その途上、この建物が目に留まった。
優れた建築を存分に見終えた後とあっては、一瞥した印象では凡庸なものとしか映らぬ。 しかしよくよく眺めてみると、各層に突出する小庇のディテールが何だかちょっと不思議そう。 ということで、気になってしまったからには仕方がない。 予めその存在を知っていた建物でもないし、予定していた順路に組み込んでいた訳でもないが、取り敢えず少し寄り道するくらいならばと、歩を向けてみる。

そして見上げたファサードが、写真1及び写真2※1
正面に向けて鉛直方向に微細な反りを伴うコンクリート造の幕板が、外壁面に対して斜め45度に振れて二方向に張り出す片持ち梁によって支持されながら壁面から浮いて取り付く。 その片持ち梁の元端の柱も外壁面に対し45度の角度を成す。
同様の幕板が先端に取り付くエントランスキャノピーの軒裏を見上げれば、そこにも梁がラティス状に交錯している状態が確認出来る。 部外者だし正面玄関は閉まっていたので屋内に入ることは出来なかったが、開口部から見える屋内執務室天井面にも菱目状に梁が露出し、照明器具もその梁の配置に合わせて取り付けられている。
つまり、各層の床スラブを支持する梁(ないしはリブ)は、全て外壁面に対し45度の角度を持つ斜め格子によって形成されている様だ。 その一端が妻壁中央最上部にも顕れている。 外部螺旋階段の支柱を支える二本の梁が、外壁面に対して45度の角度を持って取り付く(右写真)。
斜めを主題とした構造形式に呼応し、外装仕上げにも三角形のモザイクタイルが使用されている。

遠目に望む全景はやや凡庸なものなれど、細部に関してとても興味深い建物だ。 結局、その鑑賞のために帰路の列車を一本(約一時間)遅らせることと相成った。



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