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建築探訪
高岡駅前ビル
所在地:
富山県高岡市
下関町3-18

建築年:
1961年

規模:
地下1階,地上5階

写真1:外観
手前が駅前広場。右手にJR高岡駅が隣接。


JR高岡駅北口の東側に建つ商業ビル。

水平方向に連続する開口部による2,3階部分のファサード。
そして建物のほぼ中央に配置された塔屋。
それ以外には大小様々な看板が無造作に外壁面に取り付けられただけの、昭和半ば辺りに建てられたありふれた施設ということ以上の第一印象を持つには至らなかった。

ということで、当該建物の前を素通りし、高岡市内の街並みを暫し散策。 ある程度堪能して駅に戻ると、今度は駅前広場の地下に広がる商店街をそぞろ歩き。 その際、何気なく曲がったその先に、異質な雰囲気の空間が在った。

そちらの方へ向かうと、突如、視界が上方へと開ける。 見上げれば、地下1階から地上3階まで、細長い短冊状の形をした4層の吹抜けがぽっかりと開き、その先に、吹抜けによって切り取られた青空。 そして、その穿たれた吹抜けの一辺にそそり立つ塔屋が目に留まって初めて、そこが「高岡駅前ビル」の地下空間であることを認識する。



写真2:
ファサードの別アングル。タイル張りの壁面にスリットと両端の反りによる僅かな形態操作で表情を作り出している。
そして車寄せに沿う庇が一階部分に陰影をもたらし、タイル張り壁面を地上から切り離す。
写真3:
ファサードの左手から建物の側面を覗いたところ。 その側面にも、別の曲率による曲面の壁が設けられている。 道路側からは殆ど視認され得ぬ部分にも、意匠上の配慮。
そしてその側面の背後に、奥深い矩形のボリュームが連続する。 四階には片持ち形式の外部階段が矩折に廻り、屋上に昇ることが出来る。

階段で地上レベルまで上がり、吹抜けの短辺側の端部から撮ったのが、写真2。
手前に並列配置された二本の階段。 そして、背後に直交方向に設けられたもう一つの階段。 そこに絡む吹抜け廻りを巡る回廊は、天井面に設備配管が露出。
単純な構成なのだが、何やら迷宮めいた様相を呈している。

写真2に写っている正面奥の階段の背後にエレベーターシャフトが設けられており、その頂部に塔屋が載る。
そしてこのエレベーターシャフトを対称軸として、更にその向こう側に、手前側と全く同じ吹抜け空間が配置されている。
つまりこの建物は、ツインコリドール形式の平面形態の中央にエレベーターシャフト配すことでヴォイドを二つに分割した「8」の字型の平面形態によって構成されている。

建物の外に出て、駅前広場から改めて外観を眺めてみる。
第一印象においても何となく目に留まった建物中央に突出する塔屋。 例えばその塔屋の意匠を艦橋と見立てれば、細長い短冊形のこの建物はまるで駅前広場に停泊する船の様でもある。

凡庸に見える外観の内側に構築された予期せぬ設え。 そんな内部構成を知ることで改めて見えてくる外観の妙味。
退屈な建物の集積にしか見えぬ日常の都市景観の中にも、仔細に観察すれば、実はそういった建築が多数潜んでいるのかもしれない。



2011.11.26/記