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建築探訪
北越銀行本店
所在地:
新潟県長岡市
大手通2-2-14

建築年:
1965年

設計:
松田平田設計事務所

写真1:外観


写真4:
同銀行の栃尾支店外観。

外壁への白大理石の採用や出隅の面取り処理。 その白壁と四隅にRをつけたサッシの配列のみで立面を構成しているところに、本店と同じ形態操作が確認出来る。 大理石に対する二種の表面処理の使い分けも本店と同様のもの。

かつて暮らしていた長岡市の駅前通りに並ぶ建物の中で、同じ用途で供用され続け、尚且つ往時の外装をそのまま保持している建物は数少ない。 更にその存在に対する個人的な記憶を幼少期まで遡ることが可能な建物という条件を加えると、対象は極々僅かだ。
単純には、それだけ時間が流れているということではある。 不変で有り得る都市など無い。 あらゆる都市が、そこで繰り広げられる様々な営為と利欲によって常に更新され上書きされ続ける。 この地方中核都市とて、その例外とはなり得ぬ。
しかし変わるのは都市の表層を覆う建物ばかりではない。 街路も、あるいは市域の中でのポテンシャルも変容する。 市内中心商業地域としての活況は遠い過去のこと。 人の流れや賑わいすらも、記憶と現況の間には大きな断絶が生じる。

そんな中で、物理的な規模や印象を保持する点においてこの銀行建築の存在は稀有だ。
その外形は背後の北側を除き、単純な矩形。 表層は白一色の大理石張り。 張られた石のサイズは数種に規格化され、平滑に規則正しく割り付けられている。 その壁面に、四隅にRを設けた同一規格のステンレスサッシが等間隔に並ぶ。 ただそれだけの極めて単純化された限られた要素のみによって端正で清楚な外観を形成。 そしてそのことが、幼少期の視線においてもこの建物の印象をとても強いものとした。



写真2:
開口部回り詳細
写真3:
エントランス廻りの柱及び壁の石張り納まり

但し、子細に確認するとディテールに繊細な形態操作が見受けられる。
例えばステンレスサッシの開口四周に額縁として張られた石は、微妙なテーパーを伴うことでサッシ枠との間にチリを確保。 僅かな陰影を壁面にもたらしている(写真2)。 そして建物出隅やパラペット部分に設けられた面取りも、外観に表情を与えている。
同様の微細な操作は、一階部分にも確認可能だ。 例えば柱や腰壁の巾木に施された曲面加工。 あるいは出入口両脇袖壁の小口部分の面取り加工(写真3)。 これらのディテールが、建物に品格を与える。
改めてその立面を見上げてみると、張られた石の表面仕上げが二種類あることに気付く。 幼少の頃のイメージでは、全てが平滑で艶やかな表層という印象であったが、実際にはそうではない。 二階以上の基準階は殆どが粗いビシャン仕上げ。 しかし窓廻りや出隅面取り部、そして一階部分は水磨き仕上げされた石材が用いられている。

内観は、勿論営業室しか観ることが出来ないが、豊かな天井高と広々とした空間が銀行の本店としての風格を漂わせている。



INDEXに戻る 2016.01.07/記